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『外国語独習法』レビュー:多言語学習者に贈る学習メソッドとは?(著者:大山祐亮)

音声で理解!PODCAST版

まずは記事を読む前に『外国語独習法』についてPODCASTのように音声で聞きたい人向けの要約版をお聞きください。

「もう挫折しない!」「私にもできるかも!」——100言語マスターが教える、気楽で楽しい外国語「独習」のススメ

「いつか、あの言語を話せるようになりたいな」「旅行でもっと現地の人と話せたら楽しいだろうな」……そう思いながらも、なかなか一歩が踏み出せなかったり、言語学習を始めても途中で挫折してしまったり。語学学習って、どうしてこんなに難しいのかな?と思っていませんか?

私は中学生のときから学校の授業で英語を勉強し始め、語学に興味はありつつも、趣味で学習することを(休んだ期間の方が長いのですが…)ずっと続けていました。大人になってから、別の言語も始めてみたいと思い、まずは韓国語をやり始めてすぐに挫折…、その後、中国語を勉強し始めてからは語学学習が楽しくなり、ずっと中国語を趣味として独学しています。しかし、韓国語を含め、他の言語もいろいろ学んでみたいと何年も思い続け、きちんと勉強できていない状態が続いています。

そんなときに見つけた一冊『外国語独習法』!

それが、100の言語を学習したという驚異的な経歴を持つ著者、大山祐亮氏の『外国語独習法』(講談社現代新書)!

比較言語学の研究者である著者が、自身の経験に基づいて「挫折知らず」の独習ノウハウを詰め込んだこの本は、語学学習への向き合い方のヒントを教えてくれます。

語学に興味がある人や、これから語学を勉強したいけど難しいよな・・・と思っている方に向けて、読んだ感想なども含めつつ記録に残しておきます。

著者の大山さんは、比較言語学の研究者で、現在、中国に住んでいる方です。奥さんが中国人ということもあるそうですが、中国語を学習している私としては、さらに興味がわきました。

本を読んだ後、読者の他のレビューも読んでみました。(なぜ、著者でもない私がレビューを読んでいるんだと思いつつも、レビューを読んでいると、本を読んだ感想を誰かと共有している感覚になります。)「100言語マスターなんて、自分とは縁遠い世界……」と、著者の東大卒という経歴に一瞬ひるんでしまったというレビューもありました(私もその一人ですね)が、読み終えた後には「がぜん、やる気に満ちている!」と背中を押されたという声もありました。その秘密は、本書に書かれている「気楽に」「楽しむ」独習法だと思いました。


内容詳細
タイトル外国語独習法
価格1,012円(税込) ※kindle電子書籍版:957円
ページ数 224ページ(173mm x 108mm)厚さ13mm
音声無し
文字色白黒
難易度無し
評価アマゾンのカスタマーレビュー/☆5段階中4.2(2025.5.28)

なぜ今、「独習」が気になるの?——気楽さが生む継続の秘訣

この本が「独習」をテーマにしているのには、著者自身の経験が大きく関わっているそうです。著者の大山さんはコミュニケーションが得意な方ではないそうで、外国語の授業でよくある即興での質問・回答といった演習に大きな不安を感じていたそうです。これには、かつて語学の授業の緊張感が苦手で足が遠のいてしまったという感想を書いている方も多く、「めちゃくちゃ共感しました」というコメントをいくつも発見しました。

「独習」の良さは、まさにこの「気楽さ」にあると大山さんは語っています。いつ、どこで、どれだけ、何の勉強をするのも本人の自由。「間違えても恥をかかない」というメリットは、私たちにとって非常に心強い点です。他の分野では独りよがりな学習が「トンデモ化」のリスクを伴うこともあるそうですが、語学の場合は言語そのものに触れているだけでプラスの効果がある、と言っています。

「勉強=机に向かう」というスタイルにこだわらず、ベッドの上でも通勤中でも、「気楽に、継続して学ぶ環境で進めましょう」。

著者は、「忙しいしやる気もでない、でも興味はある」というのを前提として、そのうえでどう工夫すれば良いかという視点で書かれているので、時間はないけど語学に興味がある、という大人の語学学習者のリアルな状況に寄り添ってくれてる感じがしました。

100言語マスターの「挫折しない」秘訣——独習を続けるための50のルール


この本の核となるのは、語学独習における『50のルール』です。心構えから具体的な学習方法、教材選びまで、幅広いノウハウが提示されています。50と聞くと多いように感じるかもしれませんが、難しいことばかりではないので安心してください。

例えば、ルール1は「自分を責めない」。継続にはやる気が大切なので、学習にあたっては自己肯定感を味わえるやり方を推奨しています。ルール3は先ほど触れた「机に固執しない」こと。

具体的な学習法としては、「訳文にこだわりすぎない」というルールが挙げられています。例えばドイツ語の文を例に、機械的な直訳では不自然になる場合でも、読解が目標であれば内容が理解できていればOK。自然な日本語訳にするのはまた別の技術であり、慣れている人でも苦労することがあるため、翻訳にこだわりすぎると気が重くなってしまうかもしれません。この考え方は、語学学習をより気楽にしてくれます。

また、ルール33は「写経は最強の暗記法」です。書くこと自体は効率が悪いと感じるかもしれませんが、著者によれば、手の運動になる、成果物(書き写したノート)が残ってモチベーション維持になる、綴りのパターンを感覚で掴める、といったメリットがあります。書いて覚える際の極意として、文字を覚えるなら単語単位で、単語や文法を覚えるなら文単位で書くというアドバイスも。これは経験者ならではの説得力があるノウハウです。

私も中国語の学習において”听写”(音声だけを聞いて書き取りをするディクテーション)をしたことがありますが、つらすぎて長続きしませんでした。でも、効果は凄く感じています。大山さんが書いている”語楽”という言葉に込められた「語学を楽しむ」という点を私も重視しているので、最近は無理して勉強はしていません。
しかし、「中国語で3行日記」という本を買ってから、初めて日記を書くようになったのですが、すでに1年半くらい続けられています。中国語の文字を書くことで、普段は全く生活で触れることがないにもかかわらず、着実に成果が出ているのを感じます。無理せず楽しいと思える方法でやるのが一番長く続けられる秘訣ですね。

ところで、この本に書かれたこれらのルールは、「こうしなければならない」という厳格な指示ではなく、「こういうやり方をベースにすれば大外れはしないから、あとは自分に合うようにアレンジしてオリジナルのやり方を確立してください」というスタンスで書かれています。すべてのルールを試す必要はなく、興味のある部分だけを取り入れても良いとのこと。スパルタになりすぎないことが、長く続ける鍵ですね。

語学学習を始めようと考えている人が、このルールの中の1つ2つを試してみるのも、挫折しないで継続するヒントになると思います。

これだけ知っておけば大丈夫!言語学の視点からのヒント

この本の最大の特徴は、著者の大山さんが比較言語学の研究者であるという点です。この専門知識に基づいた視点は、他の語学学習書にはないユニークなものです。

特に参考になるのが、言語を「文型優先型」と「活用優先型」に大別するという視点です。学習しようとする言語がどちらに属すかを知っておくことが、学習を続ける上で非常に重要だと本書は解説しています。全体で6章あるのですが、1章目は「世界の言語地図」という比較言語学の研究者らしい内容です。個人的には、この部分は少し読み始めて、すぐに2章目から読み始めました。2章目以降は、「50のルール」を順番に説明してくれていて、楽しく読めました。目次に目を通して、面白そうと思うルールをつまみ読みしても良いと思います。

「楽しむ」が一番大事!語学学習は人生を豊かにする趣味

著者の大山さんが書かれている「ウサギではなくカメになれ」というのは、語学学習をしている多くの方に安心を与えてくれる言葉ですね。(さぼってよいというわけではないですが)

この本の最も大切なメッセージの一つは、「語学学習法の本質は『語楽』です」。つまり、語学を楽しむこと。勉強することを、毎日少しずつ気楽に継続できる計画を立てる技術こそが、著者の独習法の極意だと述べられています。

語学には実用的な側面があることももちろん重要ですが、それだけが本質ではないと著者は言っています。生まれも育ちも違う他人の言葉に触れられる側面、自分の思考を言葉にして紡げる側面、きれいな文字や本を鑑賞する芸術的な側面、そして自分の進歩を実感しやすい側面など、語学にはたくさんの魅力があるのです。

「マスターを目指すだけが語学の楽しみ方じゃない」。著者の大山さんは、野球でいうなら試合に出られるようになるまで、車の運転でいうなら免許を取るまでの手順をきっちり書いた、と言っています。つまり、プロを目指すような超人エピソードではなく、誰でも段階を踏んで着実に進んでいけるような具体的なステップを示しています。読解やリスニングなど、興味のある部分だけでも良いので、まずはこの本の通りに試してみて、自分に合うやり方を見つけていくことを推奨してくれています。

この本を読んだ他の方のレビューの中には、語学学習だけでなく他の多くのことにも興味を持っているが、単に趣味・楽しみ・好きだから学んでいるだけで、何かに役立てようと思って勉強しているのではない。本書の「終章」と「あとがき」で、そうした自分の学び方を肯定してもらい、背中を押してもらえた、という感想を述べている方もいました。語学は、年齢や職業に関わらず、人生を豊かにしてくれる素晴らしい趣味になり得るのです。

私も個人的に中国語学習年数だけが伸びている気がしますが、詳細は「【中国語検定2級】中検2級合格まで13年の体験記⁉ オススメ勉強法や勉強時間とは?」にまとめています。少しでも興味が出た方は読んでいただけたら嬉しいです。

著者へのインタビュー動画をまとめてみた

講談社現代新書『外国語独習法』

なんとこちらは著者の大山さんのYOUUTBEチャンネル「比較言語学ちゃんねる by 大山祐亮

著者本人の語りが直接聞けるので、この本を読む前、または読んだ後でも必見の内容です。

100言語マスター!?比較言語学者・大山祐亮さんが語る言語学習の極意【外国語独習法】

YOUTUBEの「ランサムはなTV
米国在住の現役フリーランス翻訳者、ランサムはなさんが、翻訳・通訳関連のお仕事、英語・日本語・外国語学習、海外生活、フリーランスに関する情報を発信しています。 語学を生かして世界で活躍したい方を応援しているチャンネルです。
ここでなんと「外国語独習法」の著者の大山さんのインタビューを2回に分けて掲出されたいたので、ここでも紹介しておきます。

100言語独習の達人・大山祐亮さんに聞く!多言語独習を成功させる秘訣とは?

こちらは続きの後半となります!

まとめ


『外国語独習法』は、100言語マスターという類まれな経験を持つ著者の大山さんが、比較言語学の専門知識を交えながら、私たち「普通の」学習者でも無理なく続けられる独習法を教えてくれる一冊です。

「気楽に」「楽しむ」 ことの重要性を強調し、自分を責めない、机に固執しない、訳文にこだわりすぎない、写経を活用する など、実践的で取り入れやすい50のルール を提示してくれます。また、言語を文型優先型と活用優先型に分けて考える視点 や、活用表の効率的な覚え方 など、言語学の知見に基づいたユニークで役立つアドバイスも満載です。

この本を読めば、「私にもできるかも!」というやる気がきっと湧いてくるはず!何よりも、語学はマスターだけを目指すのではなく、楽しむことが大切。この本は、あなた自身のペースで、あなたに合った方法で、外国語学習を「語楽」として楽しむための最高のガイドとなるかもしれませんよ。

ABOUT ME
minhe
30代後半の2008年、1週間の一人旅で初めて台湾へ行く。会う人みんな親切、かつ、この年に北京オリンピックがあったこともあり、中国語を勉強することを決意。仕事で使う機会なし、あくまでも趣味。2010年に中国語検定3級合格。その後、台湾の友人もたくさんできてSNSで交流しながら、あまり勉強せず。2018年くらいから、中国語学習を再開。2019年にHSK5級に合格。2023年3月に中国語検定2級に合格。今後は、HSK6級の合格を目指しつつ、中国語勉強関連のニュースを発信します。
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