目次
映画「こんにちは、私のお母さん」”你好!李焕英”とは
中国映画「こんにちは、私のお母さん」。
中国語のタイトルは、”你好!李焕英”(ニーハオ、リ・ホアンイン)。
中国の人気女性コメディアンの贾玲(ジア・リン)が初監督作品として、自身の実話をもとに映画化したものです。
中国語のタイトル”你好!”は「こんにちは!」、”李焕英”(リ・ホアンイン)は監督ジア・リンの母親の名前です。
この映画が2022年1月7日に日本でも封切りとなり、さっそく映画館で見てきたのですが、観客の中国人と日本人の反応の違いは、映画の背景を知っているかどうか、さらに、中国語という言語を理解しているかどうかによる差が大きいと思えました。
映画を見終えてから、映画のパンフレットも参考にしつつ、この映画を見終えた方も、この映画をこれから見る方も、事前知識として知っていたら、さらに映画が楽しめるのではないかと思い、映画の最終的なネタバレは書かずに、映画の時代背景や、使われる中国語についてまとめてみます。
映画を見終えた方は、パンフレットを購入して読むと、さらに楽しめますよ。
この映画を、母親(親)目線で見るか、娘(子ども)目線で見るかによっても、感じ方が変わる映画!
この記事を読んで時代背景などを理解したときに、もう一度、最初から映画を見直したいと思っていただけて、この記事が役に立てば幸いです。
映画『你好,李焕英』のあらすじ
[あらすじ]
2001年のある日、大学に入学したばかりの母親思いの娘が、母親を突然の事故で失う。
悲しみの中、突然1981年にタイムスリップ!
そこで若い頃の母親と出会い、未来から来た自身の気持ちをもとに、母親の恋を応援するが・・・
「こんにちは、私のお母さん」を楽しむ必須知識!
欢迎光临(ホアンイン・グアンリン)
たとえば、日本でお店に買い物に行ったときに、お店に入ると店員さんが「いらっしゃい」と言いますね。
この「いらっしゃい」が中国語では”欢迎光临(ホアンイン・グアンリン)”です。
前半2文字の”ホアンイン”という発音と、後半2文字の”グアンリン”という発音を覚えておきたいですね。
前半2文字の”欢迎(ホアンイン)”という発音が、主人公の母親であり、映画のタイトルにもなっている”李换英”(リ・ホアンイン)と同じ発音です。
後半2文字は何を表すのかは、映画内で確認してみてください。
実は、映画館で見ているときに、あきらかに中国人の方もいて、こういった中国語ネタのところでは、中国語話者が笑っていて、中国語の知識がない日本人と思われる人は、全く反応がありませんでした。
コメディは、ドタバタ喜劇で見た目で笑わせるところと、言葉によって笑わせる部分があり、中国語を少しでも理解しておくと、さらにコメディ映画を楽しめます。
女儿是妈妈的小棉袄(娘は母の綿入れ)
”女儿是妈妈的小棉袄(nǚ’ér shì māmā de xiǎo mián’ǎo)”は、映画の冒頭で登場する重要な言葉です。
”女儿是妈妈的贴心小棉袄(nǚ’ér shì māmā de tiēxīn xiǎo mián’ǎo)”とも言われ、「娘というものは、両親思いであたたかい綿入りの上着のようなものである」という意味です。
つまり、
「女の子は、親の目から見たら、とてもかわいく、賢く、利口で、とても思いやりがある。」ということを表していて、「娘のやさしさ」を褒める”褒め言葉”です。
仲の良い母親と娘の関係を表した言葉ですね。
中国の友達と、この話をしたときに、
男孩很有可能娶了媳妇忘了娘,女孩即便嫁人也会经常回家看看。
nánhái hěn yǒu kěnéng qǔle xífù wàngle niáng, nǚhái jíbiàn jià rén yě huì jīngcháng huí jiā kàn kàn.
という話題になりました。
日本語訳すると「男の子は、嫁をもらうと母親を忘れるが、女の子は、たとえ嫁に行っても、ちょくちょく実家にいる親を気にかけて戻って会いにきてくれる」というニュアンスです。
日本でも似たようなことが言えるのではないでしょうか。
中国語を勉強している方は、中国の文化的背景を知るだけでなく、中国語のフレーズを知ることで、さらにこの映画が楽しめます。
女子バレーボール
この映画を見るうえで、女子バレーボールの知識は必須!
中国の友達は、スポ根ドラマ的要素がある!と語っていたのですが、この部分の重要性をどれだけ理解しているかによって、映画の見方も変わる気がして歴史を調べてみました。
まずは、この当時の時代背景ですが、1964年に日本で初の東京オリンピックが開かれ、女子バレーボール日本代表チームが金メダルを獲得! 日本中が女子バレーに熱狂していました。
日本女子バレーボールチームは、1961年の欧州遠征で24連勝し、現地メディアに”東洋の魔女”とニックネームをつけられ、日本でも一躍ブームとなっていた時代!
《女子バレーボール:オリンピックの歴代順位》
順位 | 1964年 日本 東京 | 1968年 メキシコ メキシコシティ | 1972年 ドイツ ミュンヘン | 1976年 カナダ モントリオール | 1980年 ソ連 モスクワ | 1984年 アメリカ ロサンゼルス |
---|---|---|---|---|---|---|
金メダル 1位 | 日本 | ソ連 | ソ連 | 日本 | ソ連 | 中国 |
銀メダル 2位 | ソ連 | 日本 | 日本 | ソ連 | 東ドイツ | アメリカ |
銅メダル 3位 | ポーランド | ポーランド | 北朝鮮 | 韓国 | ブルガリア | 日本 |
上記の順位表を見てもわかるように、この当時は10年以上にわたり日本とソ連が女子バレーボールを牽引していました。
しかし、1984年のロサンゼルスオリンピックで、中国女子バレーボールチームが突如金メダルを獲得!この時代背景がポイントとなります。
1984年のロサンゼルスオリンピックから数年さかのぼり、この映画の舞台となる1981年当時の中国では女子バレーボールが一躍人気でした。
実は、中国の女子バレーボールチームの歴史を振り返ると、
《中国の女子バレーボールチームの歴史》
・1981年 ワールドカップ:優勝
・1982年 世界選手権 :優勝
・1984年 ロサンゼルスオリンピック:優勝
と1980年初頭は全盛期の時代!
女子バレーボールの全盛期の幕開けが1981年なのです。
《1984 オリンピック 女子バレー準決勝|日本 X 中国|Olympic Games Women’s Volleyball》
1984年のロサンゼルスオリンピック!女子バレーの準決勝!
『東洋の魔女』と世界中から恐れられた日本女子チームは、このオリンピックの準決勝で中国と対戦!
中国 vs 日本 の結果は3対0 で中国の勝利。決勝戦では、中国 VS アメリカで、こちらも3対0で中国が勝利し、中国が金メダルを獲得します!
この全盛期の1984年の女子バレーボールチームの中で有名な選手として、日本人選手は『中田久美選手』。2020年東京オリンピックで、女子バレーボールチームの監督を務めた方です。
そして中国人選手では『郎平選手』がトップ選手としてあげられます。
この『郎平選手』1981年~1984年の3連続優勝に貢献し、当時は、郎平が放つその強力なスパイクは「鉄のハンマー」と称され、映画内でもこのキーワードが登場しています。
2008年の北京オリンピックではアメリカの女子チーム監督となって銀メダルを獲得します。そして、2016年リオデジャネイロオリンピックにおいては、中国女子代表の監督となり、金メダルを獲得している中国女子バレーボールチームのレジェンドです。
この時代背景を覚えてる中国の方にとっては、思い出深い記憶と重なり映画に入り込むことができるのです。日本で言えば、映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」を見て、昭和時代を懐かしんでいる状況と似ているはずです。
時代背景を踏まえたうえで映画を見ると、違った方面からも楽しめますね。
古惑仔(チンピラ)
引用:娱乐新闻网
主人公のジア・シャオリンが3人の男たちを仲間に入れるときに出てくるキーワードです。
古惑仔(gǔ huò zǐ)とは、「チンピラ」という意味の言葉です。
しかし、この映画を見ている観客は、『古惑仔』と聞くと、大ヒットアニメ、さらには、このアニメのヒットにより1995年~1997年に映画でシリーズ化された『古惑仔』を思い出します。しかも、このアニメは30年以上続いており、中華圏の人であれば多くの人が知っているアニメです。
この映画の主人公を演じた俳優”郑伊健(英語・日本語表記名はイーキン・チェン)”の名前を使って笑いに変えています。
タイムスリップしてきた主人公は、俳優”郑伊健”を知っているのですが、当然、3人組の男たちは、この映画や俳優のことは知りません。
しかし、郑伊健(ジェン・イジエン)を、郑一剑(ジェン・イジエン)と認識して、ちぐはぐなまま話が展開していくという点も、中国語母語者にとっては、とても面白く笑えるところです。
字幕では、当然、このまま翻訳できないので、別の表現になっていました。そのため、私はこの場面の面白さが映画館で見ているときに理解できませんでした。
個人的に、無理やり現在の日本の状況に置き換えるならば、主人公が3人組を仲間に入れると想定して、次のようなやり取りのニュアンスになるはずです。
主人公は現代人でアニメ「鬼滅の刃」を知っている。しかし、1980年代の3人組はアニメ「鬼滅の刃」を知らない状況・・・。
という設定のもとで、
【主人公】あなたたち3人、鬼滅の刃のメンバーに加ってみない?
【3人組A】”毀滅(きめつ)の刃”?
【3人組B】相手を滅ぼすくらい強い武器がもらえるんじゃないのか?
(俺たち、凄くカッコいいメンバーの一員になれるってことか!?なんだかよくわからないけど、凄そうだな!)
【3人組A】それならOKだ。俺たちは”毀滅の刃”の永遠の仲間だぞ!
場面を変えて、映画館前で…(集まったメンバーは、鬼滅の刃のコスチュームを着ている…)
【主人公】鬼滅の刃のメンバー全員で、新作の映画「無限列車編」を見に行くよ!
【3人組】‥‥(思ったのと全然違うな…)[実際の映画内では、全員で稲刈りする服装で、稲刈りをする…]
といった様子で、チグハグなやり取りがされつつも、なぜか話が進んでいくという滑稽な場面です。
(例えが、わかり難いですね…)
映画館で見ているときに理解できなかったので、もう一度映画を見る機会があったら、再度、チェックして見たい場面です。
我的女儿,我就让她健康快乐就行了。
主人公のジア・リンと若い頃の母親が、テーブルで二人っきりで酒を酌み交わし話しをするときの言葉
我的女儿,我就让她健康快乐就行了。
wǒ de nǚ’ér, wǒ jiù ràng tā jiànkāng kuàilè jiùxíngle.
「私の娘は、健康で楽しく過ごしてくれば十分よ!」
母親の娘を思う気持ちが、この言葉に結集されています。
また、この映画のテーマともとれる言葉!
この映画を最後まで見たら、この場面をもう一度見直したいと思ったのは、私だけではないと信じたいです。
まとめ
この映画は、主人公を演じた中国の人気女性コメディアンの贾玲(ジア・リン)の実話をもとにしています。
もともと映画化のまえに、コメディとして舞台で演じられていました。
この部分については、【你好,李焕英/こんにちは、私のお母さん】中国人気女性コメディアンの初監督映画が大ヒット!女性監督で歴代最高記録!でまとめているのでご覧ください。
日本では、映画「鬼滅の刃 無限列車編」が日本映画史の興行収入を塗り替え400億円を売り上げる快挙!とニュースになりましたが、中国映画の”你好!李焕英”は、2倍以上の900億円を売り上げています。
監督のジア・リンが「世の中には間に合わない事がある。その最たるものが親孝行であると言う事」と述べています。人間は誰にでも死が訪れるからこそ、限られた人生を精一杯悔いなく生きる。
自身が親になった時に見る、または、自身の親が年老いた時に見る。それぞれ違った感情で見られる映画であり、近くにいる人を大切にしたいと思える映画でした。
ここまで読まれた方は、少なくとも興味を持っていただける方と思います。ぜひ、一度、見てみてください。
中国語検定4級の過去問を徹底解説!
中国語検定受験者は過去問をチェックして得点力アップ!
随時更新中です!