中国語学習者の皆さん、こんにちは。
中国語のスキルアップを目指す上で、「HSK(漢語水平考試)」と「中国語検定(中検)」のどちらを受けるべきか、迷っていませんか?
特に、大人になってから中国語学習を始めた方々にとって、資格取得は単なる趣味の延長ではなく、キャリアアップや留学、さらには将来の目標を具体化するための重要なステップです。限られた時間の中で、「どの資格が自分の目標達成に最も有効なのか」を見極めることは非常に重要でしょう。
この記事では、中国語能力を証明する二大試験であるHSKと中国語検定(中検)の特徴を徹底的に比較し、あなたの目的やライフプランに合わせてどちらの試験を選ぶべきかを詳しく解説します。
記事を読み終える頃には、あなたが次に進むべき道が明確になっているはずです。
HSKと中国語検定(中検)の基本情報と根本的な違い
HSKと中検は、どちらも中国語能力を測る試験ですが、その主催団体や目的、そして問われる能力の質に大きな違いがあります。
主催団体と資格の効力の範囲
HSK(漢語水平考試)は中国政府公認の国際的な試験です。HSKの成績報告は、日本を含む世界118の国と地域で公的証明として活用でき、国際的な影響力が非常に高いのが特徴です。世界で行われる中国語検定試験の中で、最も受験者数が多い資格です。
一方、中国語検定(中検)は、一般財団法人日本中国語検定協会が運営しており、日本国内のみで開催されている日本独自の試験です。中検は基本的に中国語を学ぶ日本人を対象としているため、その効力は主に日本国内で発揮されます。
項目 | 中国語検定(中検) | HSK(漢語水平考試) |
---|---|---|
運営組織 | 日本中国語検定協会 (日本) | 中国政府教育部直属機関 (中国) |
効力の範囲 | 主に日本国内 | 全世界(中国政府公認) |
対象者 | 日本語を母語とする中国人学習者 | 世界中の中国語学習者 |
ターゲット層と問われる能力の違い
主催団体の違いから、それぞれの試験が何を重視しているかが明確に分かれます。
中国語検定は、中国語の正確な知識と日本語との相互翻訳能力が求められます。日本人学習者が間違いやすい内容や、正確な翻訳能力が問われるため、難易度は非常に高いと言えます。問われる知識のイメージとしては、「10の確実な知識(量より質)」、つまり文法や単語の「教科書的なルール」を正しく深く理解できているかが重要です。
対して、HSKは、中国語を見て、聞いて、理解できているかという、実用的なコミュニケーション能力や運用能力を測る試験です。試験内容もネイティブが使う表現が使われていることもあり、実用的な運用能力を確認・証明したい人に推奨されます。問われる知識は、「100の曖昧な知識(質より量)」、つまり広く浅い知識で長文を読んで大まかな内容を把握する能力が求められます。
レベル表記と難易度(中検1級はHSK6級より難しい?)
どちらの試験も6段階のレベルに分かれていますが、レベルの数え方が逆なので注意が必要です。
• HSK:1級(易しい)〜 6級(難しい)
※ただし、2024年からHSK7級~9級という上位の級が作られました。この級は通訳や中国語を指導するレベルと考えて良いです。
• 中国語検定:準4級(易しい)〜 1級(難しい)
難易度を比較すると、HSKの最高級である6級は、中国語検定の2級〜準1級と同等レベルに相当します。HSK6級は、中国語検定1級よりも合格しやすいという認識が一般的です。
特に、中国語検定1級は非常に難しく、中国語のネイティブでさえ、勉強をしないと合格できないと言われています。現行のHSK6級では物足りず、最高レベルまで極めたいという方は、中検1級を目標にするのも良いでしょう。
試験内容・合格基準・スケジュールの詳細比較
実際に受験を考える上で、試験の仕組みや合格のしやすさ、開催頻度の違いを知っておくことは重要です。
出題形式と出題言語の違い
出題内容において、最も大きな違いは翻訳能力を問うか否かですが、一般的に中国語を学習する初級から中級の間では、試験の制限時間に違いを感じるでしょう。
中検では試験時間が余る人が比較的多く、HSKでは試験時間が足りなくなる人が多いです。
私が初めてHSK5級を受験したときは、読解問題で試験時間が足りなくなりました。HSKでは、中国語運用能力が重要なので、級が上がるにつれて大量の文章を短時間で処理する力が必要になります。
項目 | 中検:日本語の指示が含まれる | HSK:全ての指示が中国語で行われる |
---|---|---|
構成 | リスニング、読解、筆記(準1級・1級は面接あり) | リスニング(聴力)、リーディング(読解)、ライティング(作文)(1・2級はライティングなし) |
特徴的な問題 | ピンイン問題、類義語の正確な意味、日本語の漢字と同じなのに中国語で意味が異なる単語 | 実用的なコミュニケーションの場面に近い能力を問う |
対象者 | 日本語を母語とする中国人学習者 | 世界中の中国語学習者 |
中検の筆記・作文パートでは、日本語と中国語の相互翻訳がメインであり、記述形式の問題も多いです。
一方、HSKの作文は、与えられた題材に沿った作文や語順の並べ替えがメインで、自由度が高いのが特徴です。HSKには会話試験はありませんが、別途HSKKというスピーキング専門の試験があります。
合格基準の違い:合計点重視?それともバランス?

合格基準も、HSKと中検で大きく異なります。
HSK
合計点重視です。300点満点中、6割(180点)以上の点数を取ることができれば合格とみなされます(1級~4級は合否判定あり、5級・6級はスコアのみ記載だが6割以上で合格とみなされる)。リスニングやリーディングそれぞれの合格基準点は設定されていません。極端な話、漢字が多く理解しやすいリーディングで高得点を取り、リスニングが苦手でも合計点でカバーできれば合格が可能です。
中国語検定
バランス重視です。準4級以外は、リスニングと筆記それぞれに合格基準点が設けられています。どちらか一方が基準点に満たない場合、合計点が高くても不合格となるため、合格のハードルは高めだと言えます。特にリスニングが苦手な日本人にとっては、この基準が合格へのハードルを上げると言えます。
この合格基準の違いから、HSKの方が合格しやすいと言えるでしょう。
受験チャンスと受験会場の比較
項目 | 中国語検定(中検) | HSK(漢語水平考試) |
---|---|---|
年間開催数 | 年3回(3月・6月・11月。1級は11月のみ) | 開催地によるが、基本的に毎月実施(年間最大12回) |
会場 | 北海道から沖縄まで多くの都市で開催 | 毎月開催される会場と不定期開催される会場がある(東京・大阪など) |
対象者 | 日本語を母語とする中国人学習者 | 世界中の中国語学習者 |
受験チャンスが多いのはHSKですが、開催月によって会場が異なるため、都度確認が必要です。一方、中検は開催回数は少ないものの、多くの都市で実施されており、会場も固定していることが多いため、計画が立てやすいというメリットがあります。
【目的別診断】あなたが今すぐ受けるべき試験はどっち?

大人になってから学習を始めた方にとって、資格取得の目的はキャリアや留学、自己実現など多岐にわたります。自分の目標に合わせて最適な試験を選びましょう。
なお、HSKと中検の両方を受験される方も多いので、それぞれの特徴を知ったうえで、両方を受験して見ることもオススメします。
HSKの受験がおすすめな人(海外志向・運用能力重視)
HSKは、国際的なキャリアや実用的な中国語運用能力の証明を求める人に必須です。
• 海外の企業に就職・転職したい人:HSKは世界基準の資格であり、中国語関係の仕事ではHSKの点数が評価基準となることが多いため、海外企業で働く際には高い級の取得が推奨されます。
• 中国への留学を考えている人:留学先の大学からHSKの点数を求められることが多く、これは中検では代わりが効かない必須条件です。本科生として留学する場合、HSK 4級以上(または5級以上)が求められるケースが多いです。
• 中国での就業ビザのポイントアップをしたい人:中国で働くために必要な就業ビザはポイント制ですが、HSKの取得はポイント加点の対象となります(5級と6級は最大5点)。
• 中国語の運用能力を確認したい人:実際に中国人と会話をしたい方など、聞いて・読んで理解する実用的な運用能力を証明したい人におすすめです。
中国語検定の受験がおすすめな人(国内志向・基礎知識重視)
中国語検定は、日本国内での活躍や正確な知識・翻訳スキルを追求したい人に適しています。
• 日本の企業に就職・転職したい人:日本国内ではまだHSKの認知度が低いケースもあるため、「〇〇検定」という名称の中国語検定の方がその力をわかりやすく説明できることがあります。特に、企業が正しく中国語の翻訳ができる人材を求めている場合に高く評価されることがあります。
• 中国語の翻訳能力を確認したい人:翻訳家として働きたい場合など、翻訳の能力を証明したい人は中検を受けると良いです。出題内容に翻訳に必要な知識を問う問題が多いため、目標にすることでスキル向上にも繋がります。
• より高いレベルまで極めたい人:現行のHSK6級では物足りないと感じる方は、難易度の非常に高い中国語検定1級を目指すのが一つの目標となります。
• 文法や単語の基礎をしっかり固めたい人:日本人学習者が間違いやすい問題が多く出題されるため、文法や単語の基礎をしっかり身に付けるための目標として活用できます。
迷ったらまずは「何級でも良いので受けてみよう!」
もし、明確な目的が定まっていない場合は、どちらの試験でも良いので、まずはレベルチェックをして挑戦してみることをおすすめします。
検定試験の目標設定は、学習のモチベーションを維持し、進捗を測る上で非常に有効です。明確な日時が決まることで、「そこまで頑張ろう」という気持ちになり、やるべき学習も明確になります。
履歴書に「強み」として記載をアピールしたい場合は、HSKなら4級以上、中国語検定なら3級以上を目安にすると良いでしょう。これらはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でいう「B1(自立した言語使用者)」相当以上であり、相手からの評価も異なってくるからです。
HSK/中検合格に向けた効率的な勉強法と次のステップ

試験の性質が異なるため、合格に向けた勉強法も異なります。自分の選んだ試験に合わせて、効率的な対策を行いましょう。
HSKの対策で意識すべきポイント
HSKは実用的な運用能力を問う試験であり、翻訳の力は必要ありません。
1. 単語の徹底暗記:HSKでは、出題される単語が明確に規定で定められています。HSK用の単語帳やアプリを使って、規定の単語をどんどん覚えていきましょう。
2. リスニング強化:HSKは中国語検定よりもリスニングのスピードが速く、問題文も長めであるため、難易度が高い傾向にあります。過去問を繰り返し聞くことや、普段から中国語の音源に触れる機会を増やすことが有効です。
3. 過去問対策:HSKでは過去問に出てきた問題と全く同じ問題が本番で出題される可能性があるため、過去問を繰り返し解くことが特に重要です。
HSKは「正確性」よりも「大意を素早く読み取る」ことが求められるため、広く浅い知識を身につけ、実力アップを目指しましょう。
中国語検定の対策で意識すべきポイント
中国語検定は、日本人の学習者が間違いやすい問題や、正確な知識を問う問題が出題されます。
1. 文法・単語の深い理解:単語をただ大量に覚えるだけでなく、正しい用法や類義語との区別といった深い知識を確実に覚える必要があります。例えば、日本語の漢字と同じなのに中国語では意味が異なる単語の知識も求められます。
2. 翻訳練習:中国語検定は日本語と中国語の相互翻訳能力を重視しているため、「日本語→中国語」「中国語→日本語」の翻訳の練習が必須となります。
3. 基礎知識の定着:準4級〜3級ではピンインや声調の問題も出題されるため、単語を覚える際にはピンインと声調も正確に覚える必要があります。
4. 弱点分析:過去問を解いたら、HSK同様に弱点分析と対策をしっかりと行いましょう。
中検は「文法や単語の知識」や「類義語の使い分け」を問われるため、基礎固めやボキャブラリーの強化にうってつけです。
目標設定の重要性と学習を継続するコツ
HSKも中国語検定も、資格取得という目標に向かって学習を進めることは、中国語力そのものを向上させる上で非常に有効な手段です。
もし独学で進めることに不安がある、あるいは忙しい中で効率的に成果を出したい場合は、学習コーチングサービスを利用することも検討してみてください。最短距離で目標に到達するために「何を・どれくらい・どうやって」取り組めば良いかを明確にし、挫折を防ぐサポートを受けることができます。
あなたの中国語学習の目的を再確認し、最適な資格試験に挑戦することで、学習のモチベーションをさらに高め、着実に中国語力をアップさせていきましょう。
まとめ
中国語検定とHSKは、どちらも中国語能力を証明する有益な資格ですが、その特徴と適している目的が異なります。
• HSK:中国政府公認の国際資格。世界中で通用するコミュニケーション能力や実用的な運用能力を重視しています。留学や海外企業への就職・転職に有利です。
• 中国語検定(中検):日本国内で知名度が高く、日本語を母語とする学習者を対象。正確な基礎知識や相互翻訳・通訳スキルを重視しています。日本の企業への就職や、より専門的な知識を極めたい場合に適しています。
ご自身のキャリアプランや目標に合わせて最適な試験を選択し、さらなる中国語力向上へと繋がることを願っています。まずは過去問などを活用して、自分の現在のレベルと目標とする級との差を把握することから始めてみてください。
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