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データが語る!中検とHSKの受験者数推移の真実とは?

中国語検定とHSKの受験者推移

インバウンドという言葉が頻繁にテレビやニュースで取り上げられるようになり、観光地では中国語が頻繁に聞かれるようになりました。

日本国内における中国語学習者も増加しているのではないか?という考えのもと、中国語学習者は本当に増加しているのかどうかを、中国語の試験(中検とHSK)の受験者数の推移を確認することで、状況を確認し、どちらの試験が受験者数が多いのかを調べてみます。

受験者数は確実に増えています。しかし、2020年は新型肺炎のコロナの影響で、中検やHSKの試験が実施されなかったり、受験会場が縮小されているので、受験者数は一時的に減少!

ただし、推移のグラフというのは、縦軸と横軸の目盛りの取り方、さらに、どこからどこまでの数値(例えば、何年~何年までの範囲で見せるか?)によって、記事を読む人の印象を操作することができるので、読み手は注意しながら確認する必要あり!

最初に、この記事における結論を書き出しておきます。
結論
  • 推移のグラフは、縦軸と横軸の目盛りの取り方などで印象が操作されるので読者は注意すべし
  • 中国語受験者数は確実に増えている
  • 年間の受験者数ではHSKの方が多い
  • 試験一回あたりの受験者数は中国語検定の方が多い

まずは、HSKのホームページに掲載されている『日本でのHSKの受験者数の推移グラフ』の数値を参考に、さらに見やすくグラフ化したもので確認してみます。
(2020年は新型コロナの影響により、試験実施回数や試験会場の人数制限などの影響による減少があります。)

数値の引用:HSKのホームページ

このグラフを見ると、明らかに、10年、20年前からHSKの受験者数が飛躍的に増加しています。

2008年:北京オリンピックで中国の発展状況が世界的にアピール
2009年:リーマンショックにより、世界的に不景気に
2010年:中国人観光客に対する観光ビザの発給要件が緩和
2011年:東日本大震災
2015年:中国人観光客に対する観光ビザの発給要件がさらに緩和
2020年:新型コロナの発生により、HSK受験会場などの縮小。かつ、中国人観光客数も激減。

このくらいの時期から、飛躍的に中国語試験HSKの受験者が増加しています。

もちろん、北京オリンピックが開かれ、中国の経済が発展し、日本に来る中国の方が増えてきたことと重なる部分があると思います。

また、為替相場の変動も大きな理由の一つです。2023年4月の人民元の為替相場は 1円=19.5円前後(2017年の人民元の為替相場は1円=17人民元)、2010年~2012年あたりは1円=12人民元程度でした。この人民元高により中国の方が、容易に日本に旅行に来て買い物を楽しむことができるようになりました。
つまり、1000円のラーメンを食べるときに、中国人観光客は2010年当時は83元を支払っていたのですが、2023年時点では51元で済むようになりました。つまり、日本の物価がとても安く感じられるようになったのです。

これに伴い、日本に観光に来る中国語圏の方が激増したことが要因だと思います。

ただし、日本国内だけでなく、日本以外に旅行される中国語圏の旅行者も増加しているため、もし海外旅行をされる方は、海外の旅行先で中国語圏の方に出会う機会も増えてくることは確実です。

では、中国語試験の話に戻します。

上記は、HSKの受験者推移ですが、中国語検定のほうはどうでしょうか。ここ数年の推移を見てみます。

中国語検定受験者数推移 2015年~2022年

2021年以降の最新受験者数推移を確認したい方は、『【中国語検定】中検の受験者数の推移グラフ。級別のレベル・合格率の比較などの統計情報』の記事で詳しく解説しています。ただし、2020年以降はコロナの影響により、受験会場の減少などもあるため、受験者数は少なくなる点を考慮してご覧ください。特に、2020年3月の試験はコロナの影響で試験自体が未実施でした。つまり、2020年は通常年3回の試験が、年2回の試験にとどまっています。

中国語検定の受験者数推移を、準4級から1級までの級別で見てみます。

中国語検定は、年に3回実施され、1級については、年1回のみの受験となります。

これを見ると、中国語検定の受験数はこの数年間増えているとは言えません

しかも、ここまでこの記事を読んでいただいた方は、気がついたでしょうか?最初のHSK受験者数の棒グラフは1年間で受験した受験者数を1本の棒グラフにしています。しかし、上記で示した中国語検定の受験者数の推移を示す折れ線グラフは、年単位ではなくて、試験1回ごとの受験数で折れ線グラフを作成しています。HSKはほぼ毎月試験があるので、年にざっと10回ですが、中検は年3回の受験です。HSKの10回分をまとめた人数と、中検の1回ごとの数値の比較をみて、判断するのは危険です。

なお、2020年以降は新型肺炎のコロナの影響により受験会場が削減されたりしていることが大きく影響しています。

受験者数は必然的に少なくなっているので、2020年以降(第100回~)は前年と単純比較できません。

実際、100回目の試験は2020年3月実施予定でしたが、コロナの影響で中止(延期)となり、6月に実施された試験が第100回となりました。

では、最初に確認した試験のHSKと比較して、年間受験者数を比較してみます。

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中検とHSKの年間受験者数推移比較 2015年~2021年

では、年間単位で、中国語検定とHSKの受験者数の推移を比較してみましょう。
ただし、中国語検定は1年に3回、HSKは1年に10回程度の試験が実施されていることを念頭において、グラフをみていきましょう。



(※図1)
年間単位で受験者を比較したグラフを見ると、一目瞭然です。

2018年を境に、年間単位では、中検受験者数よりも、HSK受験者数のほうが多くなっています。ただし、コロナの影響により一時的にどちらも受験者数が減少しています。

中検は年間3回の受験ですが、HSKは毎月受験できるので、一概に比較はできません。しかし、インバウンドや国際化による中国語の需要が増加するのに伴い、日本国内のみで効果のある中国語検定よりも、世界中で評価のあるHSKの人気が上がってきているのではないかと推測できます。しかも、年間10回程度の受験機会のあるHSK(中検は年間3回)のほうが、受験しやすいメリットもあり、受験人口が増えるにしたがって年間受験者総数の差は広がります。

ここまでの内容を読んで納得された方は、もう一度、以下のグラフをご覧下さい。

(※図2)
このグラフは、実は先ほどのグラフと同じグラフです。
(図1と図2は、全く同じグラフですが、見た目の印象がかなり違いますね。)

こちらの図2のグラフで右半分の緑色の部分が削除されていたグラフが提示されたら、HSKの受験者が急増、中国語検定の受験者が激減していると見えるのではないでしょうか?

つまり、この記事のタイトル「データが語る!中検とHSKの受験者数推移の真実とは?」ですが、

受験者数は確実に増えています。しかし、2020年は新型肺炎のコロナの影響で、中検やHSKが行われなかった回もあるので、一時的に、受験者数は減少していますが、今後も増える傾向にあります。

ただし、推移のグラフというのは、縦軸と横軸の目盛りの取り方、さらに、どこからどこまでの数値(ここでは、例えば、何年~何年までの範囲で見せるか?)によって、記事を読む人の印象を操作することができるので、注意しながら数値の読み取りをしましょう。

ということです。

もちろん、増えたり、減ったりしていることは数値を見れば明らかなのですが、その増加具合や、減少具合はグラフの作り方によって、それを読む人の印象を変えることができるということです。

「データが語る!」とタイトルに書きましたが、今後、記事を読むときの数値やグラフというのは、このように見せ方によって、大きく印象が変わることを認識したうえで、きちんと数値を見ることを心がけましょう。

次に、2021年度のHSKと中国語検定試験の受験者人数を使って、試験1回あたりの受験者数を比較してみます。
(HSKは10月に2回試験があるのですが、ここでは1回としてカウントします。正確には、それぞれの試験において、日本全国で設置される試験会場の数も異なるので、平均での比較は参考数値としてご覧ください。)

試験年間受験者数年間試験回数1回あたりの受験者数
HSK39,219人12回3,268人
中国語検定23,709人3回7,903人
試験1回あたりの受験者数では、中国語検定の方が多いですね!HSKは年間12回(13回)試験があるので、1年間の累計受験者数が多くなります。

ところで、中国語の学習を始めようと思っていたり、学習を始めたばかりだけど、どちらの試験(中国語検定とHSK)を受験したらよいか分からないという方がいますが、この試験の違いを英語に例えると、中国語検定は”英語検定”に相当、HSKは”TOEIC”に相当します。

英語を例に挙げると、おそらく中学生や高校生の頃は、英語検定を受験していて、社会人になって仕事で必要になった方はTOEICの勉強をしている方が多いのではないでしょうか。

どららが良いということはありません。しかし、上記の英語を参考に、どちらの試験を受験するのかを決めても良いですね。

ところで、HSKと中検の受験者数を合計すると、2015年:55144名、2018年:63953名。増加率は116%なので、中国語の学習者が激増しているとまでは言えません。

英検やTOEICなどと比較すれば、やはり中国語の学習者は、かなり少ないと思うので、中国語を勉強して少しでも話せることは価値があると思います。

尚、どちらの試験も、それぞれの特徴と良さがあり、語学学習をする者としては、どちらも受験することで、語学に対する知識を増やすことと、語学学習を継続するモチベーションとして共に有効な試験であると思います。

今後も、中国語の学習を続けていきたいと思います。

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中国語検定とHSKのレベルの違い

中国語検定の級別認定基準

難易度学習時間の目安
準4級(易)中国語学習の準備完了学習時間60~120時間。基礎単語約500語
4級平易な中国語を聞き,話すことが可能学習時間120~200時間。常用語500~1,000
3級基本的な文章を読み書きが可能学習時間200~300時間
2級実務能力の基礎づくり完成の保証
仕事で中国語を使う最低限必要なレベル
500字程度の中国語の文章の部分訳
 
準1級実務に即従事しうる能力の保証
簡単な通訳ができる
 
1級
(最難関)
翻訳・通訳者レベル通訳者を目指す人が受験するレベル

HSKの級別認定基準

 

難易度単語力の目安
1級(易)中国語の非常に簡単な単語とフレーズを理解150語程度の基礎常用中国語
2級中国語を用いた簡単な日常会話を行うことができる300語程度の基礎常用中国語
3級基本的なコミュニケーションをとることができる600語程度の基礎常用中国語
4級中国語を用いて広範囲の話題について会話ができる1200語程度の常用中国語単語
5級中国語を用いて比較的整ったスピーチを行うことができる
中検2級より簡単なため、そのステップとして受験する人がいる
2500語程度の常用中国語単語
6級
(最難関)
中国語の情報をスムーズに読んだり聞いたりすることができる
中検2級と同等レベル、あるいは、簡単と言われることが多い
5000語以上の常用中国語単語

中国語検定とHSKの受験料

2020年に受験料が改定され金額が変わっているので、最新の受験料を記載しておきます。
全て税込みで記載しています。(2021年12月現在)

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中国語検定の受験料

インターネット申込試験時間
準4級(易)3,500円約75分間
4級4,800円約115分間
3級5,800円約115分間
2級7,800円約135分間
準1級9,800円約135分間
1級
(最難関)
11,800円約135分間

HSKの受験料

HSKは、いわゆる受験会場(教室)で紙の冊子が配られてマークシートや記述で試験を受ける”ペーパー試験”と、受験会場にパソコンが設置されていて、パソコンで受験する”ネット試験”の2種類があります。

それぞれのホームページは以下となります。
ペーパー試験とネット試験で、ホームページが異なるので、申し込みの時には注意してください。

HSK(ペーパー試験)のホームページ

HSK(ネット試験)のホームページ

受験料は全て税込みの金額です。
※2019年10月試験分より受験料の変更となっております。
(2021年12月時点)

ペーパー試験受験料インターネット試験受験料試験時間
1級(易)3,740円3,740円約50分間
2級4,950円4,950円約65分間
3級6,160円6,160円約100分間
4級7,370円7,370円約115分間
5級8,580円8,580円約135分間
6級
(最難関)
9,790円9,790円約150分間

体験者から語学学習の秘訣を学ぶ

中国語に興味を持っているけど、試験を受けるのに二の足を踏んでいる方、あるいは、今現在の実力では試験を受けても意味がないと考えている方!

実力がついてから試験を受けるという考えであるがために、語学力が伸び悩んでいるという可能性はないでしょうか?

まずは、自分の実力の少し上の試験用のテキストを購入し、受験申込することで、受験までの期限が設定されることになります。

その期限に合わせて勉強してみてはいかがですか? 

つまり、「勉強する」→「試験を申し込む」のではなく、

「試験を申し込む」→(期限があるから勉強せざるを得ない)→「勉強する」という順番が大切です。

以下は、ある中国語学習塾?(全く個人的には関係のない塾なので名前の記載は控えます)の中国語学習体験談です。

半年でHSK5級に合格というのは、私からすると、天才や秀才としか思えない人ではありますが、その勉強に対する心構えなどは、とても参考になりました

特に、大人になってから試験を受ける機会というのは、学生のころと比較すると格段に減ります。

その嫌いだった試験を自分から申し込み、試験対策の勉強をすることから、語学の上達の一歩が始まるのだと再認識させられた動画でした。

【中国語検定】中検の受験者数の推移グラフ。級別のレベル・合格率の比較などの統計情報 毎年3月、6月、11月の3回しか実施されない中国語検定試験! (これに対して、HSKはほぼ毎月試験が実施されます。) ...



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minhe
30代後半の2008年、1週間の一人旅で初めて台湾へ行く。会う人みんな親切、かつ、この年に北京オリンピックがあったこともあり、中国語を勉強することを決意。仕事で使う機会なし、あくまでも趣味。2010年に中国語検定3級合格。その後、台湾の友人もたくさんできてSNSで交流しながら、あまり勉強せず。2018年くらいから、中国語学習を再開。2019年にHSK5級に合格。2023年3月に中国語検定2級に合格。今後は、HSK6級の合格を目指しつつ、中国語勉強関連のニュースを発信します。
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